★ 各種講演会・自由学校「講座」

 有識者、ジャーナリスト、学者、NPOなどからの講演・講座を行います。

【1月市民講演会】安倍/自民党「一強」を考える
      − どうすれば民意を反映する正統政治をとりもどせるか −

 ―1.27 中北 浩爾(こうじ)さん(一橋大学大学院社会学研究科教授)―

1980年代―政権交代はなかったが権力は分散していた
Photo  自民党は昨年秋の総選挙で圧勝した。政権を奪還した2012年以来、国政選挙で実に5連勝である。通常ならば「2012年体制」の成立などと言う声が聞こえてきてもおかしくないが、依然として耳にするのは、自民党「1強」と言う言葉である。つまり単なる強さを超えて、民主主義の観点から現状を正統化しようという動きは現れていない。そもそも現在の自民党には、外交や経済など個別の政策領域のブレーンしか見当たらない。
 かっては違った。大平正芳首相などのブレーンを務めた香山健一や佐藤誠三郎らは1980年代、こう主張した。確かに、自民党長期政権ゆえに政権交代は存在しない。しかし、分権的な党組織のもと、族議員などが媒介して、多様な民意が包摂されている。したがって、自民党政権が民主主義として劣っているという批判は正しくないと、と。86年の衆参ダブル選挙で大勝した中曽根康弘首相は、この日本型多元主義に基づき、自民党が左にウィングを伸ばし、「1986年体制」が始まったと宣言した。

1994年、政治改革モデルに
 以上のような自民党長期政権肯定論を否定して、新たな民主主議をめざしたのが、94年の政治改革であった。それがモデルとしたイギリスの政治は、政権交代と権力集中を特徴とする。2大政党が政権をめぐって競争し、勝った方の党首が首相に就き、トップダウンで選挙公約を実現する。自民党から民主党への2009年の本格的な政権交代は、一連の政治改革の最大の成果であった。
 ところが、民主党政権は国民の期待に応えられないまま、空中分解してします。その結果が、12年以来、今日まで続く自民党「一強」である。野党が分裂し、無党派層の期待も集められないため、政権交代がおきない。それにもかかわらず、内閣人事局の設置に至る政治改革で、首相のトップダウンによる政策決定が可能になっている。

「競争」も「参加」も減退し、自民党「一強」は単なる統治に
Photo  この間、自民党の支持基盤は相対的な優位を維持しながらも縮小し、多様な民意を包摂する能力を減退させた。小選挙区制の導入や新自由主義改革などを背景に族議員は影響力を弱め、それに結びつく業界団体も衰退した。国会議員の個人後援会の弱体化も著しい。こうしたなかで、1990年代初頭に500万人を上回った自民党の党員は現在、5分の1の100万人強に減り、国政選挙の投票率も80年代に比べて20ポイント程度低下し、50%台前半を推移している。政権交代と言う政党間の「競争」もなければ、多様な民意を包摂するという「参加」の契機も乏しくなっている。つまり、現在の自民党「一強」を民主主義の論理から正統化するのは難しい。正統化できるとすれば、安定した政権運営が高いパフォーマンスを生み出しているという統治の論理しかない。安倍晋三首相が事あるごとに実績を誇り、民主党政権よりもマシと発言するのは、それゆえである。

民主主義を取り戻すために野党は再結集を
 低迷を続ける野党にとってのチャンスは、ここに存在する。ポスト自民党「1強」とは、政権交代の可能性を取り戻す一方で、行き過ぎた権力集中を是正し、多様な民意を包摂するような民主主義でなければならない。先の総選挙で「草の根からの民主主義」を訴える立憲民主党が躍進したことは、それを示している。首相の解散権の制限、市民の政治参加を妨げる現行の公職選挙法や政治資金規正法の改正、小選挙区制などを掲げて、野党は再結集を図ってはどうか。